【収録レポート】小田和正とアーティストが2年ぶり集結 「風を待って」初披露した音楽特番『クリスマスの約束 2021』収録レポ

2021.3.16

リアルサウンド

https://realsound.jp/2021/12/post-931230.html

 シンガーソングライター・小田和正による音楽特番『クリスマスの約束 2021』(TBS系)。コロナの影響もあり昨年は開催が叶わず、2年ぶり19回目となる今年は、8年ぶりに舞浜アンフィシアターで収録が行われた。メンバー全員がステージに登場すると、声があげられない分、力強く手を振る人も多く見られた。

 「みなさんお久しぶりです」。小田が第一声をあげると、会場は喜びの拍手に包まれた。小田は、スターダスト☆レビュー・根本要、TRICERATOPS・和田唱、矢井田瞳、熊木杏里、JUJU、いきものがかり・水野良樹、スキマスイッチ(大橋卓弥・常田真太郎)を、一人ひとり名前を呼んで紹介した。

 「この曲は、コロナが収束していくことを願って書いて、このメンバーに参加してもらって、レコーディングしました。その時、本当はみんなで一緒に歌って欲しかったのですが、感染は収まるどころかさらに広がり、歌入れは一人ずつ別々になって、それは叶いませんでした。1年半を経て、今日こうして歌える日が来ました」と語り、2021年元日に発売された小田の配信シングル「風を待って」を初披露。大橋もレコーディングの際「いつかみんなで集まって歌えるといいですね」と話していたそうで、〈ずっと 待っていた 風が 今吹いた〉という歌詞と、メンバーの想いが重なるようだった。〈空の青さに 守られながらゆっくり歩いて 行こう〉という歌詞に、会場全体があたたかく包まれ、優しいクリスマスの夜の幕開けとなった。

 会場からの割れんばかりの拍手に、小田も思わず「最初からアンコールみたい」と笑顔に。根本は、「今日はゆったりした雰囲気で、素晴らしい名曲たちを楽しんでもらおうとみんなで選んできました」と選曲への思いを語った。

 小田は、次に披露する曲がカバー曲であることを受け、「洋邦問わずたくさんカバーしていますが、まだ歌いたい曲はありますか?」とJUJUに問いかけると、JUJUは「無尽蔵に!」と意気込んだ。その後、「中でも中島みゆきさんはみんなカバーしてますけれども、ちょっと前にスーパーに行ったんですね、僕」と話し始めると、会場にはどよめきが。「すると向こうから背筋をシャキッと伸ばして、すっすっと歩いてくる女の人がいて、誰かと思ったら中島みゆきさんで……気づいたら売り場のすみの方に隠れていました」と意外なエピソードを話し、会場は大爆笑。その流れで、矢井田・熊木・JUJUが中心となり、中島みゆきの「時代」を披露した。

 続いて「今回、ある若いアーティストが『キラキラ』を歌ってくれていると聞いて、本日来ていただきました」と小田の紹介で登場したのは、『クリスマスの約束』初出演となる緑黄色社会・長屋晴子。名古屋出身の長屋は、小田にお勧めの食べ物を聞かれ、「あんかけスパゲッティ」と答えると、同意するように会場から拍手があがった。小田は「僕らは『メラキラ』と呼んでたんですけど」と前置きし、緑黄色社会「Mela!」と小田の「キラキラ」を続けて熱唱。長屋の力強い歌声が全体を引っ張り、会場が一段と明るい輝きを放った。

 その後、荒井由実(松任谷由実)の「あの日にかえりたい」を披露する前置きとして、小田は女性陣に、それぞれの“かえりたい日”を順に聞いていく。矢井田は「小6になる娘が、コロナで大変な中、工夫して素晴らしい劇を見せてくれた学芸会をまた見たい」、長屋は「幼稚園の運動会のかけっこで、負けず嫌いのあまり他の子を前にいかせないように両手を広げて走っていたので、人の邪魔をしちゃダメだと伝えたい」、熊木は「カレーを作る母の後ろ姿をみながら、『少年ジャンプ』を読んでいたい」、JUJUは「あまり戻りたい時はないが、『クリ約』の最初のリハーサルで小田さんにJUJU『ちゃん』と呼んで欲しいと伝えたい」など、人柄が垣間見えるエピソードを語ってくれた。

 続いて、「桑田(佳佑)くんの曲をやろうということになって、僕は(サザンオールスターズの)『いとしのエリー』をと言ったのですが、せっかくのクリスマスなのだから、というみんなの意見におされて……」という経緯で決まったという「白い恋人達」へ。アレンジはスキマスイッチの二人が手掛け、小田がタンバリン、矢井田がトライアングルで彩りを添えた。JUJUの強く儚い歌声に導かれ、白い雪が降り積もる情景が目に浮かんだ。

 その後、「レパートリーも増えてきたし、いつか(小田、根本、スキマスイッチ、水野の)委員会バンドでワンマンツアーやりたいね」という明るい話題も飛び出した。そして「コロナでは、随分音楽に救われました。そして、素直にみんなと音楽をしたいと思いました。僕らはこの状況をどう乗り越えていくのでしょう」と話し歌ったのは、以前の『クリスマスの約束』でも披露したことのある、井上陽水「最後のニュース」。歌詞の中の一つひとつの問いかけに耳を済ませ、私たちが置かれているこの状況を省みる時間となった。

 フィナーレが近づき、「2021年の『クリスマスの約束』はどうでしたか?」と問いかける小田。鳴り止まない拍手にこたえ、アンコールとして清水翔太、長屋を加え、「風を待って」を最後にもう一度披露した。会場がクラップをするたび、一つひとつの言葉が心に染み込んでいくようだった。マスク越しに笑顔をみせる観客に向け、〈ここで 見つけたもの 皆のあの笑顔〉と歌いかける小田の姿に、この曲は今日完成したのだ、とさえ感じた。〈今は戻らないから 大切なんじゃなくて 今を重ねて明日へ つながって行くから〉。未来を信じ、今を大切に生きる。急がなくていい、ゆっくり歩いて行こう。小田は昨今の情勢を受け、感じた想いを音楽に変えた。「コロナの収束を願って書いた」と、はっきりと表明して曲を発表するアーティストは、この情勢においても意外と多くないと感じる。メッセージ性のある曲は敬遠される時代、そんな背景もあるかもしれない。コロナ禍で創作を制限するアーティストや、コロナ禍であっても今まで通りを心がけるアーティストもいる。そんな中、来年75歳を迎える小田が、これほど美しく力を与える曲を届けてくれることに、心打たれるものがあった。

 「また会おうね!」。小田は、思わず言葉が溢れたかのようにそう声をかけ、ステージをあとにした。〈It’s going to be all right〉、「風を待って」の最後のこの歌詞は、番組からのクリスマスプレゼントだ。ぬくもりにあふれた一夜、放送はTBS系列にて、12月24日深夜24時20分から。

0コメント

  • 1000 / 1000