【ライブレポート】秋山黄色、FINLANDSとのツーマンライブで見せた表現力の豊かさ 新曲「夕暮れに映して」も披露
リアルサウンド
2019.8.1
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— Real Sound(リアルサウンド) (@realsoundjp) July 31, 2019
秋山黄色が7月25日、『秋山黄色 2MAN LIVE “Encounter”』をTSUTAYA O-nestにて開催した。今回はFINLANDSとの初のツーマンライブ。これについて秋山黄色は、今までのライブの中で一番長尺だと言い、「すでに知ってくれて応援してくれている皆さんにも、新しい物に遭遇したというわくわくする”緊張感”を与えられたらなと思います」とコメントしていた。
先に登場したFINLANDSは、今回も“真夏でもモッズコート”の姿勢を貫いていた。1曲目の「ウィークエンド」から、塩入冬湖(Vo/Gt)が独特だが美しい高音を響かせる。骨太なサウンドが、時に儚げな歌声をしっかりと支えていた。そのまま「バラード」へ。絞り出すような声でまくしたてながら、塩入はステージから前にせり出し、ギターをかき鳴らしていた。続いて塩入のかわいらしい声から始まったのは「UTOPIA」。ステップを踏むようなベースラインも心地よい。
塩入は「人間はなぜ良いことがあると悪いことがあるって思うんだろう」とずっと考えていると言い、「別に良いことばかりを望んでもいいんじゃないかな」と奏で始めたのは「PLANET」。ロマンチックなメロディに、穏やかなコーラスが重なる。
「どんな選択をしても未来には必ず未練はあるものだから、選択に敬意を持って手を振って、また違った未来を作っていければ」と語り、「衛星」へ。1曲の中で様々な声を使い分け、何個もの楽器を鳴らしているようだった。「yellow boost」は、泣き出しそうな震える声で締めくくられていたのが印象的だった。「call end」と最後の「クレーター」では、ギアを一つ上げたかのように、髪を振り乱しながら楽器を奏でていた。音の濁流に飲みこまれたような気分とともに、FINLANDSのステージは幕を閉じた。
そしていよいよ秋山黄色の登場かと、期待に胸を膨らませる観客たちの多くが、赤いグッズタオルを肩にかけていた(ちなみに秋山黄色のTwitterアカウント名は@ILikeAkairoなので、赤は彼の好きな色のようだ)。客席からは「曲が好きなんだよね」と話す声も聞かれ、リスナーの日常に彼の曲がとけ込んでいることを感じた。
いざ秋山黄色がステージに登場すると、会場が明らかに高揚し始める。1曲目の「猿上がりシティーポップ」のイントロが鳴ると、歓声と共に観客はすかさず拳を挙げ、Aメロではクラップを鳴らす。「いくぞ!」と短く言うと、それに応えて一斉にサビを口ずさむ。私は今年2月15日にも彼のライブをレポートしたのだが、(参考:秋山黄色は公演中にさえ“進化”するーーユアネスと眩暈SIREN迎えたスリーマンライブレポ)その時よりも、観客たちがさらに曲を聴きこみ、自分自身と重ね合わせた上でこの場所に来ていることが、一瞬でわかった。
続けて「やさぐれカイドー」へ。イントロのギターリフを奏でる姿は、ライブに対する不安が全くない。心なしか以前より、テンポもあがったような気もする。そのくらい、恐れの無い音だった。
彼の進化のスピードが速すぎて、ずっと遠くへ行ってしまったような気持ちになったが、突然「ちょっとチューニングします、すみません!」と、相変わらず彼の家に招かれたようなゆるさも健在で、なんだかほっとする。歌とMCのギャップも、彼の魅力の一つだ。1年前の同会場でのライブでは、指から出血するなど「大爆死した」そうだが、今回は見事ソールドアウト。「紆余曲折あってツーマンまでこぎ着けたので、見届けてください!」とかき鳴らし始めたのは、「クラッカー・シャドー」。深い海の底のような青い照明のステージで〈薄暗い 部屋 今日も一人〉という歌詞が歌われると、一見孤独なように見える。しかしこの歌詞の部分でフロア全体がクラップしており、秋山黄色一人の曲だったものが、今は多くの人の曲になっていることを感じた。CDにはない、唸るようなギターアレンジも印象的だった。
続いて「日々よ」では、スローテンポな曲がゆえ、伸びやかでありながら力強い歌声が、より一層耳に届く。美しくビブラートしているのに、弱々しくはなく、むしろ強い意志さえ感じる。ここで、彼の声のバリエーションが増えていることに気づかされる。ハスキーな声、ストレートな声、太い声、裏声…こんなに短期間で人の表現力は上がるものなのかと、またも驚かされた。
5曲を終えた時点で“ソロアーティストは解散も無く、色々な人とやれる”と、メリットを語った。この日はサポートに4人を迎えてのパフォーマンスだったが、今後もメンバーは増えていくと思うとも話した。
また「失敗なしでは自分の人格は形成されていない」と言い「忘れられないし、忘れたくない。どんなに転んでた俺も、俺だからさ」と歌詞を引用しながら、8月9日に配信リリースされる新曲「夕暮れに映して」を披露。MCと繋がるようにサビで〈忘れられない。忘れられない。忘れられないもんな〉と繰り返し歌う。秋山の想いと、新たな試みが詰まった一曲だった。
「スライムライフ」では〈僕のそばには 心臓と音とギターだけ〉と、心をかきむしるようにギターを鳴らす。バンドが一体となり、音が迫ってくるようだった。ここで、9月に初のワンマンライブを開催するという発表に会場は大歓声に包まれる。「とうこうのはて」では客席を煽ると、フロアは日頃の鬱憤を晴らすかのように踊り、「とうこうのはて」と大声で叫んでいた。
熱気冷めやらぬ中、最後に披露されたのは「クソフラペチーノ」。まさにライブで化ける曲であり、メンバーも暴れ回り、楽しそうに演奏していた。最後まで歓声は鳴り止まず、汗だくで、スッキリとした笑顔の観客の姿があった。
2月のレポートで「秋山黄色は公演中にさえ“進化”する」と書いた。その進化が公演中だけでなく、この半年間続いていたことを確信したライブだった。自宅で音楽を作っていた青年が、自信をつけ、この日は完全に場を自分のものにしていた。彼はMCで「今までは家で一人でお母さんに心配されながらやっていたことを、こうやって何人かに期待されながらやる遊びに大きく変わっていくと思う」と語った。彼の進化はとどまることをしらない。何人かといわず、何万人もの人に期待されライブをする日も、すぐ近くに待っているような気がした。
(写真=鈴木友莉)
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