【イベントレポート】スピッツ、新アルバム『見っけ』に感じた変わらぬ魅力と新鮮さ 最速プレミア試聴会レポ

リアルサウンド
2019.9.8
https://realsound.jp/2019/09/post-413406.html

9月6日、スピッツのニューアルバム『見っけ』(10月9日発売予定)の最速プレミア試聴会が行われた。本アルバムは前作『醒めない』から3年2カ月ぶり、通算16作目のアルバムである。

 会場にはスピッツのロゴが施されたクッキーやケーキ等が並び、約3年ぶりのリリースをお祝いするような楽しいムード。そして、イベントはスピッツデビュー当時からディレクターをしている竹内修へのインタビューからスタートした。本アルバムでの楽曲の変化として、「Aメロ、Bメロ、サビ、2番、間奏」という定型から外れ、語るべきことが簡潔になって研ぎ澄まされてきており、より少ない言葉で表現している、と言及した。またレコーディングに立ち会って驚くこととしては、人間の耳は加齢で悪くなるはずだが、(メンバーの)耳がどんどん良くなって、より要求が厳しくなっているようにみえると話した。実際スピッツは、準備は入念に、レコーディングはさくっと、そしてトラックダウンとマスタリングの長さは普通の10倍くらいだという。最後にスピッツが愛されている理由として、真面目で音楽に対して誠実であること、そして自分たちが面白い、興味のあることしかやらないスタンスではないか、と語った。

 その後、『見っけ』収録の全12曲が、曲順通りにフルサイズで流された。1曲目はアルバムタイトルでもある「見っけ」。言葉が身体に吸い込まれていくような、ファンタジー感溢れる1曲だった。4曲目の「ラジオデイズ」は、『SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記』(TOKYO FM)でパーソナリティを務めるほどラジオ好きの草野らしい1曲。ラジオに心救われたことのある人は、特に共感できそうだ。8曲目の「YM71D」はイントロから一風変わったメロディライン。そして最も印象的だったのは、10曲目の「まがった僕のしっぽ」。竹内いわく、仮タイトルは「プログレ」であり、曲中でテンポが変わるのはスピッツにとって初めての試みだという。現代的なメロディに、歌詞も今までには聞かれなかったようなフレーズがあるように感じ、「こんなスピッツもいたのか」と心を掴まれた。そして最後の「ヤマブキ」が、実に清々しい。この曲に向けて1曲目から通して聴くと、山を登り切ったような気持ちになった。

 スピッツはいつでも変わらず、そこにいてくれる。そんな感覚があるのだが、今作もまた、媚びること無く、自分たちが出したい音を自由に表現していることを感じた。聴きなじみのない言葉選びや、一回では理解しきれない歌詞、動物をテーマにした表現など、“いつものスピッツここにあり”、とほっとした気持ちにもなった。しかし一方で、後ろを振り返らず、自分を信じ、前に進んでいくような楽曲もあり、50代になった彼らの前向きな姿に新鮮さも感じた。

 先日「ロビンソン」のMVが、90年代にリリースされた楽曲としては初めてYouTube再生回数1億回を突破した。いつの時代も、自分たちが面白いと思うことに、誠実に向き合い続けてきたスピッツの楽曲が、時代を超えて愛されていることの証明であろう。『見っけ』は、そんな彼らの普遍的な良さをそのままに、今の時代だから書かれたであろうメロディや歌詞も詰まっていた。現代のある種の生きづらさにも、触れていたような気がする。物語性を感じる曲もあり、さらりと読める短編集のような、色々なスピッツを「見っけ」できた一枚だった。

 なおスピッツはアルバムリリースの後、全国ツアー『SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020 “MIKKE”』を控えている。こちらも楽しみに待ちたい。(深海アオミ)


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